赤ちゃんの散歩がてら、ハードオフをぶらぶらしていたときのこと。
特に何かを買うつもりがあったわけではないのだが、オーディオコーナーを見ていると、なんとDALI ZENSOR 1が置いてあるではないか。
DALI ZENSOR 1といえば、ネット上でも「コスパの塊」と言われるほどに評判のよいスピーカーである。
これは気になる。
そして、気になったものを見つけてしまったのが運の尽き。気が付いたら購入していた。
ハードオフでお値打ち品が売られていたら、置き去りになんてできないですよね。
これまで使っていたのはTIME DOMAINのmypod8
大学生の頃、タイムドメイン社の講義を聞く機会があり、そこで原音再生という考え方に惚れ込んでしまった。
そんなこともあり、社会人になってシロクマ社のMYPOD8を使っていた。
MYPOD8は音の広がりやリアルさが魅力的で、楽器の音なども気持ちよく聴かせてくれる。個人的には、かなり気に入っているスピーカーだ。
ただし、低音が物足りない。
そこで、aiyima A1001とサブウーファーのSWA60を追加し、低音を補って使っていた。
これで低音の量感も確保でき、音の広がりやリアルさについては満足していたのだが、ひとつ問題があった。
スピーカーから離れると、音がかなり聴きづらくなるのである。
近くで聴く分にはよいのだが、リビングでテレビを見るときなど、少し離れた場所から聴く使い方には厳しいものがあった。
そこで、もう少しリビング向きのスピーカーが欲しいと思い、いろいろと物色していたところ、今回のDALI ZENSOR 1に出会ってしまったわけである。
DALI ZENSOR 1は思った以上に低音が出る
購入後、最初はこれまで使っていたサブウーファーのSWA60も接続していた。
ところが、スイープ音を再生しながらクロスオーバー周波数を調整していると、意外なことが分かった。
DALI ZENSOR 1とSWA60の低音の再生範囲が、思っていたほどきれいに分かれていないのである。というか、サブウーファーを追加しても、低音の強化になるどころか、邪魔をしているだけだった。ZそのくらいDALI ZENSOR 1の低音は素晴らしい。40Hzからちゃんと重低音が鳴り、50Hzあたりからビシビシ鳴るのだ。
結局、SWA60は外して、ZENSOR 1だけで低音も再生することにした。
ZENSOR 1は小型のブックシェルフスピーカーなので、低音についてはそれほど期待していなかったのだが、実際に聴いてみると、思った以上にズシッと低音が出る。
そんなわけで、ZENSOR 1単体で楽しんでいる。
せっかくなので、ネットワークのコンデンサを交換してみる
さて、今回の記事の本題はここからである。(毎回前置きが長くてすみません)
ZENSOR 1について調べていると、内部のスピーカーネットワークに電解コンデンサが使われていることを知った。
私が購入したのは2011年製の個体。すでに15年ほど経過している。
電解コンデンサといえば、電子回路では経年劣化が気になる部品のひとつである。
もちろん、スピーカーのネットワークに使われているコンデンサが、15年経過したからといって必ず劣化しているとは限らない。実際、取り外したコンデンサにも、見た目で分かるような異常はなかった。

しかし、せっかく内部を触る機会があるのなら、長期的な使用も考えて交換しておきたい。
そこで今回は、もともと使われていたバイポーラ電解コンデンサを、フィルムコンデンサに交換することにした。
今回の改造では、音質の変化を楽しむことに加えて、コンデンサの種類を変更することで経年劣化への耐性も考慮している。
ZENSOR 1のネットワークに使われているコンデンサ
今回、交換対象となったコンデンサは次の2種類。
| 接続先 | 元のコンデンサ | 役割 |
|---|---|---|
| ツイーター側 | 5.6µF | 高域を通すハイパス回路 |
| ウーファー側 | 6.8µF | ネットワークの周波数特性を調整する回路 |
どちらもバイポーラ電解コンデンサが使われていた。「おお、電解コンデンサなんだ」という感想ですね。この価格帯ならてっきりフィルムコンデンサかと思いました。

低音から中音域はウーファー、高音域はツイーターというように、それぞれのユニットが得意な音域を受け持つように設計されている。
その役割分担を実現するのが、スピーカーネットワークである。
コンデンサやコイル、抵抗などを組み合わせて、各ユニットに送る信号の周波数特性を調整している。
コンデンサの容量から、カットオフ周波数を計算してみる
せっかくネットワークを分解したので、回路図から各ユニットの周波数特性についても考えてみよう。
まず、ツイーター側には5.6µFのコンデンサと0.16mHのコイルが使われている。
コンデンサとコイルから求められるLC共振周波数は、次の式で計算できる。
f₀ = 1 / (2π√(LC))
それぞれの値を代入すると、次のようになる。
f₀ = 1 / (2π√(0.16 × 10⁻³ × 5.6 × 10⁻⁶))
計算結果は約5.3kHzとなる。
つまり、この2つの部品から計算されるLC共振周波数は約5,300Hzということになる。
ただし、これはあくまでLC共振周波数であり、ツイーターのカットオフ周波数そのものではない。
実際の回路には2.2Ωの抵抗や33Ωの抵抗があり、さらにツイーター自体のインピーダンスも影響する。そのため、この計算値だけで実際のクロスオーバー周波数を決めることはできない。
一方、ウーファー側には0.5mHのコイルが直列に入っている。
こちらは、ウーファーを公称インピーダンス6Ωの抵抗と仮定し、単純なRLローパス回路として近似すると、カットオフ周波数は次の式で求められる。
fc = R / (2πL)
fc = 6 / (2π × 0.5 × 10⁻³)
計算結果は約1.9kHzとなる。
ただし、こちらもあくまで単純化した回路での概算値である。
実際の回路には2.7Ωの抵抗と6.8µFのコンデンサによる分岐回路も接続されているため、ウーファーの実際のカットオフ周波数が1.9kHzだと断定することはできない。
また、2.7Ωと6.8µFから計算できるRC回路の特性周波数は約8.7kHzだが、これもウーファーのカットオフ周波数を意味するものではない。
スピーカーのネットワークは、単純にコンデンサの容量だけで周波数が決まるわけではない。
だが、まぁこのあたりにカットオフ周波数がありそうなことはわかる。
コンデンサが劣化するとどうなるのか?
電解コンデンサの経年劣化では、一般に静電容量の変化やESRの増加などが起こり得る。
ただし、劣化の仕方や程度は、コンデンサの種類、使用環境、温度、経過年数などによって異なる。容量が必ず減少するわけでも、ESRが必ず大きくなるわけでもない。
今回のコンデンサも、実際に容量やESRを測定したわけではないので、劣化していたと断定することはできない。
それでも、どのような影響が考えられるのか、いつもどっち方向に変わるのか忘れるので、簡単に整理しておく。
静電容量が変化すると、ユニットの役割分担が変わる
コンデンサは、交流信号に対して周波数によって異なるリアクタンスを示す。
その大きさは、次の式で表される。
XC = 1 / (2πfC)
ここで、XCは容量性リアクタンス、fは周波数、Cは静電容量である。
つまり、周波数が高くなるほど、また容量が大きくなるほど、コンデンサは信号を通しやすくなる。
ツイーター側のコンデンサは、高域を通すハイパス回路に使われている。
仮に容量が小さくなれば、ほかの条件が同じ場合、低い周波数の信号がツイーターに届きにくくなる。結果として、ツイーターが受け持つ音域が高い側にずれる可能性がある。
一方、ウーファー側のコンデンサは、抵抗と組み合わせた分岐回路の一部として働いている。
こちらの容量が変化すると、分岐回路の周波数特性が変わり、ウーファーとツイーターの役割分担にも影響する可能性がある。
ただし、実際のクロスオーバー周波数や音圧特性は、コンデンサだけでなく、コイル、ユニットのインピーダンス、回路構成などにも左右される。
そのため、容量が変化したからといって、必ず特定の周波数で音が途切れたり、明確に音質が悪化したりするわけではない。
ESRが増加すると、ツイーターの音量が低下する可能性がある
もうひとつ、曲者のESRである。
ESRとは、Equivalent Series Resistanceの略で、「等価直列抵抗」と呼ばれる。
理想的なコンデンサには抵抗がないが、実際のコンデンサには、電極や内部構造などに由来する損失がある。
それを、コンデンサに直列に接続された抵抗として表現したものがESRだ。
簡単にいえば、コンデンサが信号を通すときに、どの程度の損失が発生するかを考えるための指標である。
ツイーター側のコンデンサは、ツイーターに対して直列に入っている。
このコンデンサのESRが大きくなると、コンデンサ自体での電圧降下が増え、ツイーターに届く信号が小さくなる可能性がある。
つまり、ESRの増加によって、高音の音量が低下することが考えられるわけだ。
一方、ウーファー側のコンデンサは、ローパス回路の一部として働くため、ESRの変化は単純な音量低下ではなく、周波数特性やクロスオーバー付近の挙動に影響する。
このように、同じコンデンサでも、どこに接続されているかによって影響が異なるのだ。
電解コンデンサからフィルムコンデンサへ
今回交換に使ったのは、AliExpressで格安で購入したフィルムコンデンサである。
フィルムコンデンサは、一般に電解コンデンサと比べてESRが低く、静電容量の精度が高い製品も多い。また、適切な定格や使用条件で使えば、電解液の乾燥による劣化を心配する必要がない。
もちろん、フィルムコンデンサなら何でもよいわけではない。品質や定格、温度特性などは製品によって異なる。
今回は、元の回路設計を変えないよう、静電容量は元の値と同じものを選んだ。
- ツイーター側:5.6µF
- ウーファー側:6.8µF
ここで、フィルムコンデンサに交換すれば必ず高音が増える、あるいは音がきれいになる、と考えるのは少し乱暴かもしれない。
ESRが低くなることで、ツイーターの直列回路での損失が減り、音圧が変化する可能性はある。つまり、高音が大きくなって、「お!高音がきれいになった」と感じる人が多い訳だ。
また、元のコンデンサが正常であれば、交換による変化が小さい可能性もある。
それでも、長年の経年劣化を考えたときに、予防策的にコンデンサを交換しておくのは悪くないだろう。
いざ分解!ターミナルを外すだけでは交換できない
さて、実際の作業に入ろう。
ZENSOR 1のスピーカーネットワークは、背面のスピーカーターミナルの裏側に配置されている。
最初は、ターミナルを取り外せば簡単にコンデンサを交換できるだろうと思っていた。
ところが、そう簡単にはいかなかった。
ターミナルの裏側にあるネットワークには、ツイーターとウーファーが信号線で接続されている。
そのため、ネットワークを取り出すには、結局ウーファーとツイーターも取り外して分解する必要があった。
小型のブックシェルフスピーカーなので、内部はそれほど広くない。
こういう作業は、実際に分解してみないと分からないことがある。
まぁ、これもDIYの楽しみということにしておこう。

ネジにDALIの印字が。ここに金を使うなら、スピーカーネットワークにフィルムコンデンサーを使って欲しかった気はする。
はんだ吸い取り線でコンデンサを交換
ネットワークを取り出したら、いよいよコンデンサの交換である。

今回は、はんだ吸い取り線を使って、基板から元のコンデンサを取り外した。
作業自体は難しくなく、はんだを吸い取って部品を取り外し、新しいフィルムコンデンサを取り付ければよい。

ただし、基板のパターンを傷めないように、はんだごてを長時間当て続けないよう注意したい。
今回のフィルムコンデンサは、元の電解コンデンサと比べてかなり大きかった。
そもそも、フィルムコンデンサは同じ容量でも、製品によっては電解コンデンサより大きくなる。
基板上にきれいに収めるのは難しかったため、最終的にはホットボンドを使って固定した。

見た目は少々強引だが、内部に収めて固定することができればよい。
あとは元どおりに組み立てれば、コンデンサ交換は完了である。

フィルムコンデンサに交換した結果、音はどう変わった?
交換作業が終わり、スピーカーを元どおりに組み立てて、さっそく音を聴いてみた。
まず感じたのは、高音の変化だ。
高音がとても澄んでいて、きれいに聴こえるようになった。
解像度も上がったように感じる。
特に中音から高音にかけては、今まで一枚ベールがかかっていたものが、スッと剥がれたような印象だ。
YouTubeの動画に、コンデンサを変えても音は変化しないというものもあったが、今回は静電容量が変わった可能性もあり、ESRも1桁以上小さくなったので、変化はあったのだろう。
ただ、交換直後には、低音の量感が少なくなったようにも感じた。
ただ、しばらく音楽を再生しているうちに、低音の量感は戻ってきた。
コンデンサ交換によって低音が一時的に減り、その後復活した理由については、現時点でははっきりしない。(ウーファーとツイーターを分解する必要があったので、慣らし運転期間が必要だった?)

いずれにしても、最終的には低音も十分に出ており、ZENSOR 1の音を気持ちよく楽しめている。

まとめ
今回は、ハードオフで偶然購入したDALI ZENSOR 1のスピーカーネットワークを分解し、純正のバイポーラ電解コンデンサをフィルムコンデンサに交換してみた。
交換したコンデンサは、ツイーター側が5.6µF、ウーファー側が6.8µF。容量は元の値を維持している。
作業では、ターミナルの裏側にあるネットワークを取り出すために、ウーファーとツイーターも取り外す必要があった。ただし、コンデンサそのものの交換は、はんだ吸い取り線を使えば比較的簡単だった。

交換後の音については、高音が澄み、解像度が上がったように感じられた。中〜高音のベールが一枚剥がれたような印象もあり、個人的には満足している。
ただし、フィルムコンデンサに交換すれば必ず音質が向上するわけではない。元のコンデンサの状態や回路設計によって結果は変わるため、今回の感想はあくまで私の環境での結果である。
2011年製のスピーカーなので、今後も長く使っていくことを考えると、内部部品を見直しておくのも悪くない。
せっかく手に入れたZENSOR 1。これからも大切に使っていこうと思う。
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