Raspberry Pi の HiFi DAC まとめ
Raspberry Pi は、I2S (Inter-IC Sound)というインターフェースを持っている。IC間で音楽データをやり取りする規格で、音楽データとクロックを同じ芯線に載せて伝送するため、音楽データとクロックのずれ(ジッタ)が少なく、精度の高い伝送が可能であるため、高音質と言われている。
対して、光出力で有名な S/P DIF という規格は、音楽データとクロックを別々の信号として送受信するため、音楽データとクロックのジッタが大きいと言われている。
Raspberry Pi から I2S で DAC と接続する HiFi DAC が俄に人気が出ている。
ざっと調べてみただけでも、↓こんなに多くの DAC が売られている。
ベンダー | 商品名 | DAC IC | zeroサイズ | Master Mode (クロック) | ヘッドフォンアンプ | サンプリングコンバータ (ASRC) | 備考 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
HIFIBERRY | DAC+ LIGHT | ES9023 | ◯ | $22.90 | ||||
DAC+ STANDARD | PCM5122 | $28.90 | ||||||
DAC+ ZERO | PCM5101 | ◯ | $16.90 | |||||
DAC+ PRO XLR | PCM5242 | 22/24MHz | XLR出力 | $39.90 | ||||
Allo | Piano 2.1 HI-FI DAC | PCM5142×2 | $49.00 | |||||
PIANO DAC | PCM5122 | TPA6133A2 | $27.00 | |||||
BOSS DAC | PCM5122 | 45/49MHz | $65.00 | |||||
MINIBOSS DAC | PCM5122 | ◯ | 45/49MHz | $39.00 | ||||
IQaudIO | Pi-DAC+ | PCM5122 | TPA6133A | €30.00 | ||||
Pi-DAC Zero | PCM5122 | ◯ | €12.00 | |||||
Pi-DAC PRO | PCM5142 | TPA6133A | バランス出力 | €42.00 | ||||
JustBoom | DAC Zero pHAT | PCM5121 | ◯ | TPA6132A2 | €20.00 | |||
DAC HAT | PCM5122 | TPA6133A2 | €30.00 | |||||
pimorori | pHAT DAC | PCM5102 | ◯ | ¥1,516 | ||||
nabe | msBerryDAC | PCM5122 | 22/24MHz | 拡張で追加可能 | ¥9,980 | |||
New Western Electric | Sabreberry DAC ZERO | ES9023 | ◯ | OPA1662 | ◯ | ¥7,800 | ||
Sabreberry32 | ES9018Q2C | 45/49MHz | ES9018Q2C | ¥19,000 | ||||
One Board Audio | DAC 01 | PCM5242 | 22/24MHz | OPA1622 | 25mm出力 | – | ||
Bright Tone | Terra-Berry2 DAC | AK4490 | ◯ | ¥25,000 |
どれを購入するか迷うので、ポイントを比較していきたいと思う。
DAC IC の比較
DAC の音質を決める主役は、何と言っても DAC IC だ。
Raspberry Pi の I2S DAC に使われることの多い IC を比較してみたいと思う。
ICベンダー | 製品名 | Sampling | DNR(dB) | 特徴 | 参考価格(DIGIKEY) |
---|---|---|---|---|---|
Texas Instruments | PCM5101 | 32bit 384kHz | 106 | 硬質なくっきりとしたサウンド | $2.95 |
PCM5102 | 32bit 384kHz | 112 | $5.73 | ||
PCM5121 | 32bit 384kHz | 106 | $3.68 | ||
PCM5122 | 32bit 384kHz | 112 | $6.02 | ||
PCM5142 | 32bit 384kHz | 112 | $7.17 | ||
ESS | ES9023 | 24bit 192kHz | 112 | クセがなく、繊細な音 | 安め? |
ES9018Q2C | 32bit 384kHz | 121 | クリアで空間が広くクセがない、悪いレビューは見たことがないくらい優秀なIC | 約4000円? | |
旭化成エレクトロニクス | AK4490 | 32bit 768kHz | 112 | 国産DAC ICで、忠実で繊細で高音質と有名 | $4.99 |
TI の PCM51xx系について
TI の DAC IC は、多くの種類があるが、型番の下1桁が 「1」 or 「2」 でダイナミックレンジが異なる。
下一桁が「2」の型番の方が、ダイナミックレンジが広く、高音質が期待できるので、できればこちらを選びたい。
TI の PCM510x / PCM512x / PCM514x の違いは、
PCM510x系:ソフトウェアボリューム
PCM512x系:ハードウェアボリューム対応
PCM514x系:ハードウェアボリューム対応 + DSP搭載
というだけであり、音質差は無い。
32bit 384kHz に対応しており、性能として不足することはない。
Raspberry Pi DAC として、最も人気の IC であると言える。
ESS の ES90xx系について
ESS と言えば、高級オーディオDACに ES9018 が使われることが多いことで有名である。
その中で、廉価版の位置付けの ES9023 が有名だが、「可もなく不可もなく無難」という評価が多い。
ES9018Q2C は、高級オーディオDACに使われる ES9018 の、モバイルかつ廉価版の位置付けだが、それでも、IC単体で4000円程度の価格がするICだ。
ES9018の型番を付けているだけあり、ノイズが少なく澄み渡る音と評判が高い。
旭化成エレクトロニクス AK4490について
唯一の国産ICな AK4490 は、ESS の ES9018 を超えているのではないかと言われることのあるほど、良いICと言われている。
安いのに、忠実で繊細な音を鳴らす。
マスターモード(クロック)について
音再生の心臓とも言えるのがクロックだ。このクロックに合わせて DAC IC は処理を行う。
マスタークロック(システムクロック)がずれていれば、原音に忠実な再生ができなくなる。
(ジッタノイズが大きいと言われる)
DAC IC のクロックが関連する動作モードには、以下の3種類がある。
スレーブモード(Sync) | I2S出力デバイスが生成するクロックをマスターとして動作。つまり、I2S出力デバイスのクロックが安定していれば良いが、Raspberry Pi等のデバイスであれば不安定であり、ジッタノイズが大きい |
非同期モード(ASync) | USB DAC 等に多い動作モードで、音楽データとクロックを非同期として、DAC IC に外部から正確なクロック信号を入力する動作モード。ジッタノイズは低くできることが特徴 |
マスターモード | DAC IC に正確なクロックを入れて、そのクロックをI2Sデバイスに送り、正確なクロックで叩き直してから、音楽データとクロックをI2S出力デバイスから、DAC IC に送る方式。やや複雑だが、ジッタノイズは低くできることが特徴 |
Raspberry Pi の I2S 出力を行う場合は、マスターモードが高音質を狙えるモードとなる。
(USB DAC を接続する場合は、非同期モード(ASync)モードが良い)
Raspberry Pi DAC が、マスターモードに対応しているかは、クロックを生成する水晶発振子/水晶発振器を2つ以上搭載しているかで判別できる。
(マスターモードで動作させるためには、異なる2つのクロックが必要となるため、水晶発振子/水晶発振器が2つ以上搭載されていれば、マスターモードで動作させる機能を具備していると判断できる)
水晶発振子
サンプリング周波数が、CDなら44.1KHzだし、DVDなら48kHzとなっている。
DVD再生機として、マスタークロックとして最近最もよく利用されるのは48kHz x 256 = 12.288MHzだ。
PC音源の場合は、様々なサンプリング周波数の音源があるため、複数の基準周波数を生成するためには、異なる2つのクロックが必要になるという訳だ。
正確なクロックであれば、できるかぎり高周波の方が、高音質を狙いやすい。
Raspberry Pi DAC でマスターモード動作に対応しているDACは、マスタークロックは「22 / 24 MHz」 と 「45 / 49 MHz」の2種類があるが、「45 / 49 MHz」の方が高音質が期待できる。
どのメーカーの水晶発振器を使っているか、また、温度補正機能の付いた水晶発振器によって、クロック精度が異なる。水晶発振子/水晶発振器を交換するのも楽しい改造となる。
結局、どの DAC を買ったのか?
私は、Raspberry Pi Zero W を使いたいので、Zeroサイズに対応しているもので、マスタークロックモードに対応しているものを探した結果、Allo の MINIBOSS DAC を購入した。
導入記や音のレビューはこちらを↓
Kuman dac I2S サウンドカード Raspberry pi用 PiFi Digi/DAC+/HIFI ラズベリーパイ dac デジタルオーディ…
コメント
興味深く拝見させていただきました。
HiFiBerry のDAC+ ZEROは、外部クロック 22MHz,24MHzは動かないと思います。
https://www.hifiberry.com/products/dacplus/
を下にスクロールするとHiFiBerry製品比較表があります。
コメントありがとうございます。
HiFiBerry DAC+ ZEROの外部クロックについて、ご指摘いただいたとおりですね。
誤植がありました。さっそく修正させていただきました。
たいへんたすかりました、ありがとうございます。
[…] Raspberry Pi の HiFi DAC 一覧まとめ(I2S出力)Raspberry Pi でお手軽 HiFi DAC 構築ができることで有名なので、市販 Raspi DAC を調べたのでメモblog.bnikka.com […]
[…] 1;の上書きをしてくれるそうです。RaspberryPiの場合は、/boot/config.txtがそれにあたるみたいですね。ちなみに、RaspberryPi用DACボードのまとめをしてくれているサイトを見つけました。こちら […]