自作オーディオDAC(PCM1794A+CS8416)



DACを作りたい

以前に、かなり力を入れて、NOS DAC(Non Over Sampling Digital Analog Converter)を制作し、長らくこれを使ってきた。

TDA1543CS8414の石(IC)を使った、トラディッショナルなDACだ。暖かい良い音が鳴るので気に入っていた。
(製作記はこちら↓)

はじめに タイムドメイン(TIMEDOMAIN)社の由井さんの講義を聞く機会を得たので行ってきた。 周波数領域でフラットになるように...

そんな中、Raspberry Piの持つI2S出力から(S/PDIFを介するのではなく)ダイレクトにDACに入力するHi-Fi DACキットを購入し、音を出してみると、おったまげた。
(Raspberry Pi DACのレビューはこちら↓)

MINIBOSS I2S DAC Raspberry Pi の I2S インターフェースを使うことで、クロックジッタを低減...

MINIBOSSというRaspberry Pi の HiFi DACで、PCM5122のICを使ったDACなのだが、音の解像度、クリアさ、臨場感、低音と言い、素晴らしい。

TDA1543を使った自作NOS DACの限界を感じてしまった。

そこで、最近では最も音が良いと言われているPCM1794AというDAC ICを使って、DACを作ることにした訳である。完全に泥沼にハマった状態かもしれない。

PCM1794A+CS8416 DAC設計

まずは、DAI (Digital Audio Interface) の設計を行う。

DAIの設計

PCM1794Aと相性の良いDAIとして、Cirrus Logic社のCS8416旭化成エレクトロニクス社製 AK4113がよく使われている。

前回、NOS DACを制作した際は、CS8414を使用したので、よく似ているCS8416を使用することにした。

CS8416から、I2S (Inter-IC Sound)で出力して、PCM1794Aへオーディオデータを入れる

I2Sについては、こちらのエントリで詳しく書いたので、興味があれば参照ください。

Raspberry Pi の HiFi DAC まとめ Raspberry Pi は、I2S (Inter-IC Sound)というインタ...

CS8416のデータシート を読んで、評価回路を参考にして回路を設計。
ちなみに、CS8416のデータシートは、とんでもなく分厚い。全部読むのは不可能なので、要所々々読むと良い。

CS8416は、ソフトモードとハードモードがある。マイコンで制御するまでしたくないので、簡単なハードモードで動かすことにした。
なお、ここで注意だが、ハードモードは、出力が24bitしか対応していない
TDA1543のような古いDAC ICは、16bitのみ対応というものもあり、CS8416が使えない場合がある。

今回使用するPCM1794Aは、24bit入力対応なので問題ない

CS8416 DAI回路図

(クリックで画像が最大化されます)

部品一覧

部品番号型番概要数量単価購入先
DAI ICCirrus Logics CS841624bit 192kHz対応DAI IC1¥996Mouser Electronics
RST ICNJM2103リセットIC1¥90秋月電子
TORXPLR135/T光レシーバ1¥150秋月電子
L10147uHインダクター(47μH1.2A)LHL08NB470K1¥30秋月電子
R10147kΩ抵抗8¥9共立エレショップ
R1023kΩ抵抗1¥30共立エレショップ
R10347Ω抵抗1¥30共立エレショップ
C1010.1uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ4¥15秋月電子
C1020.022uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ1¥15秋月電子
C1031000pFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ1¥15秋月電子
C1040.01uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ1¥15秋月電子
SSOP変換アダプタTSSOP28ピン(0.65mm)・SOP28ピン(1.27mm)DIP変換基板変換アダプタ1¥50秋月電子
DIPソケット丸ピンICソケット ( 8P)DIPソケット1¥15秋月電子

データシートを読んでいて、なかなか分からなかったことをメモしておく。

(1)RESET (RST) はリセットICからの入力を得る
電源が安定するまでは、RESET ICがRESET信号をV+にしないらしく、電源が安定するまでCS8416を動作させないための工夫とのこと。リセットICは、NJM2103など秋月電子で100円くらいで売っている。

(2)RXSEL[0,1]でRXP[0,3]を選択する(入力ソースの選択)
これもデータシートを読んでいて分からなかったのだが、RXSEL[0,1]をGND/VDDに切り替えることで、RXP[0,3]のオーディオ入力を切り替えることができるらしい。わざわざ入力切り替え器を作らなくても良くて便利。

(3)ハードモードで、OMCKに外部クロックを入力すると幸せになれるか
OMCKに精度の高いクロックを入れると、OSCLKとOLRCKが、入力された精度の高いクロックによって叩き直されて送出される。ハードモードでは、柔軟に外部クロックを入れたり切ったりはできないらしいが、ソフトモードだとできるらしい。ハードモードだと、44.1kHz/44.8kHzなどサンプリングレートが違う入力が入ってきた時に、固定的なクロック周波数となるため、うまくいかない。外部クロックを入れたかったのだが、残念。ただ、CS8416内に高精度な水晶発振子を持っているらしく、高精度クロックで各種信号を叩き直してジッタノイズ対策をし、RMCKなどを生成してくれるらしい。

掲載した回路図は、外部クロックを入力した場合の構成例だが、外部クロックを入れない場合は、OMCK(25pin)をGNDに落とすと良い。

DACまわりの設計

DAC ICはもちろん Texas Instruments社の PCM1794A だ。

PCM1794Aのデータシート を読んで勉強した。

PCM1794Aは分かりやすいDACで、データシートの分量も少なく、かなりシンプルな回路構成となった。

PCM1794A DAC回路図
(画像クリックで拡大します)

部品一覧

部品番号型番概要数量単価購入先
DAC ICTexas Instruments PCM1794A132dB SNR 24bit 192kHz DAC1¥1484Mouser Electronics
R20110kΩ抵抗1¥30共立エレショップ
C2010.1uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ4¥15秋月電子
C20247uFコンデンサ ニチコンFG2¥20秋月電子
C20310uFコンデンサ ニチコンFG3¥10秋月電子
SSOP変換アダプタTSSOP28ピン(0.65mm)・SOP28ピン(1.27mm)DIP変換基板変換アダプタ1¥50秋月電子

PCM1794Aから出力した後は、オペアンプによりIV変換を行う。1段目のオペアンプでIV変換して差動出力(バランス出力)にし、 2段目のオペアンプでアンバランス出力に変える回路となっている。

実は、PCM1794Aのデータシートに載っているサプルアプリケーションの回路図をそのまま使える。なので、PCM1794Aのデータシートを転記します↓

PCM1794Aアナログ回路
(画像クリックで拡大します)

部品一覧

部品番号型番概要数量単価購入先
オペアンプTexas Instruments OPA6041回路入オペアンプ3✕2¥374.5Mouser Electronics
R1,R2820Ω抵抗2✕2¥30共立エレショップ
R3,R4,R5,R6360Ω抵抗4✕2¥30
(200Ωと150Ω)
共立エレショップ
R7100Ω
DALE
抵抗1✕2¥84共立エレショップ
C1,C22200pFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ2✕2¥15秋月電子
C3,C42700pFポリプロピレンフィルムコンデンサ100V 2700pF2✕2¥16共立エレショップ
C11,C12,C13,
C14,C15,C16
0.1uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ6✕2¥15秋月電子
C17,C1822pF絶縁型ラジアルリード型積層セラミックコンデンサ2✕2¥10秋月電子
C1933pFポリフェニレンサルファイド フィルムコンデンサ PPSC1✕2¥152共立エレショップ
DIPソケット丸ピンICソケット ( 8P)DIPソケット6¥15秋月電子

電源部の設計(チャージポンプICによる負電圧生成)

電源部の設計だ。

トランス電源 v.s. スイッチング電源 で悩む。

トランス電源は、高周波ノイズが少なく、オペアンプ用の負電圧も簡単に作ることができる。
だが、電力効率が低い。DACはわざわざ出かける度に電源OFFにしたくないので、消費電力が気になるところ。

スイッチング電源は、電力効率が高い一方で、高周波スイッチングのためのノイズや、負電圧が作るのが難しい点が悩ましい。
スイッチング電源は、トロイダルコアでLPF(ローパスフィルター)を作れば、高周波ノイズは取り除けること、チャージポンプICを使えば負電源が作れることから、今回はスイッチング電源で作ることにする。

5V、3.3V、12Vの電源回路はこちら。

電源回路
(画像クリックで拡大します)

-12Vの電源回路がこちら。

負電源回路図
(画像クリックで拡大します)

NJW4191MというチャージポンプICを使って、負電源を作り出している。

チャージポンプICとは、高速にスイッチングして回路をつなぎ替えることで、負電源を作ることができるICだ。便利なのだが、かなり無理をして負電圧を作るので、出力電流が1つのICにつき、55mAと小さい。

これだと、オペアンプを駆動するのに心もとないので、ICを4つ並列に並べて使うことにした。
(回路図は、最後の2つの回路は記載を省略した)

電源部の設計(トロイダルトランスを使用した負電圧の生成)

当初、チャージポンプICを使用してオペアンプ用の負電圧を生成しようと思ったのだが、チャージポンプICは出力電流が55mA程度と小さく、スイッチングによるノイズも精神衛生上は気になるので、結局トロイダルトランスを使用した負電圧の生成を行うことにした

トランスには、EIトランス、トロイダルトランス、Rコアトランスの3種類がある

それぞれの特徴は下表の感じだ。トロイダルトランスかRコアトランスを選びたい。

トランスの種類特徴
EIトランス[メリット]価格が安い
[デメリット]電磁漏れが多く、電力効率が悪い(消費電力が大きくなる)。電磁漏れが多いので、ノイズを発生しやすい。重い。
トロイダルトランス[メリット]電磁漏れが小さく、電力効率が高い(95%の高効率のトランスもある)。ノイズが少ない。軽い。
[デメリット]価格が高い。
Rコアトランス特徴はトロイダルトランスとほぼ同じ。
構造上、電磁漏れが一直線上になりやすく、箱入れの際は考慮すると良い。

今回は、CS8416やPCM1794AのICを安く購入できたMouser Electronicsで、¥2011という破格でトロイダルトランスが売られていたので、トロイダルトランスを選定した。

AC(交流)をDC(直流)に変換するための整流回路を作る必要がある。

センタータップ式ブリッジ整流方式や、ダブルブリッジ整流方式など色々な種類がある。センタータップ式ブリッジ整流方式は、トロイダルトランスなどは巻き芯数が微妙に異なることがあり、その巻き数の違いによりGNDとなる電圧は0Vにならず、整流時に電流の往来がGNDに発生してしまうことがある。

従って、音質面ではダブルブリッジ整流方式が良い

ダブルブリッジ整流回路は下図のような回路だ。

ダブルブリッジ整流回路

12V、-12V、5V、3.3Vの生成は、前述した回路と同じ。

12Vと-12Vは、ACアダプタからの電源入力ではなくなったので、5Vや3.3Vと同じようにレギュレータを介することにした。
(下図では表していませんが、12V回路の前に、レギュレータをはさんでいます)

電源回路

部品一覧

部品番号型番概要数量単価購入先
L1〜L4
(トロイダルトランス)
Power Transformers POWER XFMR 12.0VCT@2.08A UL/CE TOROIDAL MOUNT12VCT@2.08Aのトロイダルトランス1¥2011Mouser Electronics
D1〜D8
(ダイオード)
UF2010 1000V2A高耐圧高速整流用ダイオード8¥20秋月電子
C1,C2
(電解コンデンサ)
4700μF50V85℃オーディオ用電解コンデンサー ニチコンKW2¥280秋月電子
ヒューズMF51NR 250V1A 20mmガラス管ヒューズ1¥20秋月電子
ヒューズホルダーMF-505ヒューズホルダー(基板取付用)1¥29秋月電子
レギュレータ12V低損失三端子レギュレーター 12V1A LM2940CT-12 コンデンサ、ネジ付きセットレギュレータ1¥100秋月電子
レギュレータ-12V三端子レギュレーター -12V1A NJM7912FA 負電源用レギュレータ1¥50秋月電子
レギュレータ 5V低損失三端子レギュレーター 5V1A TA4805Sレギュレータ1¥100秋月電子
レギュレータ 3.3V低損失三端子レギュレーター 3.3V1A TA48033Sレギュレータ2¥100秋月電子
L143uHトロイダルコイル5¥50秋月電子
C11000uH電解コンデンサ ニチコンFG5¥50秋月電子
C20.22uFメタライズドポリエステルフィルムコンデンサ5¥25秋月電子
ACアダプタ端子MJ-102.1mm標準DCジャック パネル取付用1¥40秋月電子

その他の部品一覧

部品番号型番概要数量単価購入先
RCA端子RJ-2290N/WRCAジャック3¥60秋月電子
電源スイッチ3Pトグルスイッチ 1回路2接点2¥80秋月電子
ケーブル1m×10色 導体外径0.54mm(AWG24相当)1¥300秋月電子
ハウジング用コンタクトSXH-001T-P0.62¥30秋月電子
XHコネクタB2B-XH-A10¥10秋月電子
XHコネクタB3B-XH-A10¥10秋月電子
XHコネクタハウジング 2P XHP-210¥5秋月電子
XHコネクタハウジング 3P XHP-310¥5秋月電子
ユニバーサル基板95mm x 72mmガラスコンポジットユニバーサル基板2¥100秋月電子
ハンダ鉛フリーはんだ1¥270秋月電子
フラックスFS211-811¥540秋月電子
スペーサーセットM33¥50秋月電子

プリント基板設計

今回は、ある程度部品点数が多いので、プリント基板を設計して実装することにした。中国のプリント基板を製造するサービスを利用すると、送料込みで2000円くらいでプリント基板を作ることができる。

プリント基板製作までの大まかな流れは下記のような感じだ。とても簡単。

プリント基板製作までの大まかな流れ
(1)回路図を作成する
(2)回路図を元に、プリント基板を設計する(ほぼソフトの自動配置を使って自動生成)
(3)プリント基板製造会社へ発注
(4)宅急便で届く

(1)回路図を作成する

回路図の作成は、最も有名なソフトウェアである Eagle を使うと良い。

Eagle は、対応している部品の数が圧倒的で、後工程のプリント基板設計の自動配線機能など、無料で使えるとは思えないくらい素晴らしいソフトだ。

無料のお試し版だと、プリント基板は100mm x 80mm のサイズまでしか設計できないが、大きな回路を設計するのではなければ、十分なサイズだ。

回路作成風景はこんな感じ↓

Eagleで回路設計

ちなみに、CS8416 や PCM1794A のライブラリは無かったので、下記サイトでEagle用のLibraryを入手した。

https://componentsearchengine.com/index.html

ERCという回路のエラーチェック機能があるので、これはかけておいた方が良い。

(2)プリント基板の設計

これが、Eagleのプリント基板設計画面だ↓
(ベタGNDする前)

PCM1794A DAC プリント基板

部品配置は自分で行う必要があるが、煩わしい配線は、Eagleの自動配線機能を使うと、とても簡単にできる。

配線サイズは、PCM1794AがSSOPだったので、0.3mmの太さにした。
(ほんとうは、もっと太くしたかったのだが、SSOPの足は細すぎるので、この太さが限界だった。)

ただ、手動でできるところは0.5mmの配線も使った。

ベタGNDした後はこのような感じ↓

PCM1794A DAC プリント基板

ベタGND後のプリント基板に、DRC(エラーチェック)をかけて、エラーを訂正して完了だ。

(3)プリント基板製造会社へ発注

プリント基板製造会社は、国産企業から中国企業まで、数多くある。

国内の企業は、安心の品質だが、1枚基板をつくるだけで1万円は下らない。

一方で、中国のプリント基板製造会社は、送料込みで2000円くらいで製造してもらえる
ということで、今回は中国のプリント基板製造会社で最も有名な speeed fusion PCB を利用した。

最近のEagleは、speeed fusion PCB 向けのガーバーファイル(発注するために必要なファイル群を生成するための定義ファイル)が、デフォルトで入っている。

DRC(エラーチェック)の定義ファイルはspeeed fusion PCBからダウンロードした。

speeed fusion PCB の発注画面はこんな感じ。

10枚作って、$4.90と格安だ。

speeed fusion PCB 発注画面

ガーバーファイルをアップロードすると、アップロードしたプリント基板を、彼らのシステム上で確認することができる。

speeed fusion PCB 発注画面

中国からの発送となり、送料は$15くらい。

(4)宅急便で届く

現在発注し、到着待ちの状況です!乞うご期待

ケースの選定

かっこいいケースに入れたいなぁと思っていたのだが、いつも使っているタカチなど色々見たが、良いのが見つからなかった。

そこで気がついたのだ。既成オーディオ製品の箱を流用すれば良いのだと。

既成オーディオ製品は、結構良いケースを使っている。しかも、RCA端子などの穴あけも終わっている電源ケーブルやヒートシンクまでも付いてくるのだ!

ということで、メルカリでジャンク品を探していると、1500円(送料込み)で DENON の UAVC-300 というホームシアターアンプが販売されているのを発見。

ポチっ

届いたケースがこちら↓(すでに呼び方がケースになっている笑)

UAVC-300

背面のお姿がこちら↓

UAVC-300

バラしてみると、こんなに立派なヒートシンクが。
これは流用できて嬉しい。しかも、レギュレータを取り付けるための穴が既に空いている。
これは助かる!

UAVC-300

トランス電源は、トロイダルトランスかRコアトランスを期待したのだが、EIトランスだった。残念。前述したとおり、EIトランスは電力効率が悪いので、流用するのはやめた。

UAVC-300

解体後のケースはこんな感じ↓

UAVC-300

S/PDIFやRCA端子の穴が空いており、加工がとても楽そうだ。

UAVC-300

このLED用の穴を使えば、電源ON/OFFのランプも光らせることができる。

UAVC-300

送料込み1500円で手に入ったケースとは思えないくらい品質が高い。

部品実装

現在、部品とプリント基板の到着待ち



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