はじめに
ノートパソコンを買った当初、オンボードのサウンドカードしかなく、ヘッドフォン端子からアンプに繋いでスピーカーから音を出していた。
とりあえず白黒アナログ出力端子の備わった環境が早急に欲しかったので、深く思案もせず安価だったSoundBlaster Digital Music
LXを購入した。
Amazonで送料込み5000円弱という破格だった。
その場しのぎくらいの考えで購入したのだが、長く使っているうちに愛着が湧いてきた。
澄んだ音も、使いやすいイコライザーなどもなかなか良い。
このままこのサウンドカードを使い続けようと思った。
ところが、アンプを自作、スピーカーを自作すると、以前は愛しかったサウンドカードがだんだん物足りなくなってきた。
人間の欲というものは底がない。
恐ろしいものだ。
そこで、SoundBlaster Digital Music LXの改造に乗り出したのだった。
分解してみる
SoundBlasterの底についているゴムがとれかけていたので、思い切って取ってみた。
すると…
ネジ頭が出てきたではないか。
開けてみたい衝動に負け、分解してみることに。
パカッ。
あ〜メーカー保証が無くなっちゃった。
すごい密集度だ。
ICにオペアンプにチップ抵抗にコンデンサが山盛り。
光出力端子の隣とヘッドホン端子の隣のパターンがあいている。
恐らく、Digital Music LXと上位機種のDigital Music PXとは基盤は同じなのだろう。
USBバスパワーの改善
SoundBlaster Digital Music LXはUSB経由で電力をもらうUSBバスパワーだ。
パソコンというものはノイズだらけと考えて良い。
そのパソコンから電力をもらうわけだから、その電力はノイズだらけだろう。
つまり、USBバスパワーはオーディオに向いているとは言いがたい。
そこで、入力電圧に並列にデカップリングコンデンサを入れることで、USBバスパワーの改善に乗り出すことにした。
デカップリングコンデンサを入れることで、電圧の振動を押さえ、きれいな直流電圧の供給に近づくことが期待される。
もうすでに、Digital Musicの改造を紹介なさっている方がいた。
こちらに習って行うことにした。
どうやら赤印のIC(レギュレータ?)にコンデンサを接続するとデカップリングになるらしい。
上図と同じ向きに見たとき、下図のように100uF〜470uF程度のコンデンサを接続すれば良い。
実際に配線すると次ようになる。
家の近くにある電子部品屋にはオーディオ用コンデンサが売られていなかった。
しぶしぶ珍しく売られていたタンタルコンデンサを使用することにした。
普通の電解コンデンサよりはマシだろう。
丸っこくテカテカしていて可愛らしい。
色も、なかなか良い。
バスパワーには5Vの電圧が用いられているので、耐圧は6Vのものを選択。
容量は220uF。
上の写真では+と書かれた左側の足がプラスだ。
タンタルコンデンサは異様に高く、1つ367円もした。
2008年11月17日 追記
タンタルコンデンサは故障時に短絡になるので、デカップリングコンデンサとして使うのは危険であると、その後ネットサーフィンして知って焦った。
故障する前で良かった、現在はOS-CONを変わりに使用している。
(AOYAGI様 ご指摘感謝します。)
全景はこのようになった。
タンタルコンデンサの青が浮いていて良い。
改造の結果
同じボリュームでも音量が大きくなり、低音がガンガン出るようになった。
これまではバスブーストしていたのだが、改造後はバスブーストが必要なくなった。
また、S/N比が向上したような太く濃い音になった。
また、RightMark Audio Analyzerというソフトを用いてサウンドカードの性能を計測してみた。
改造前 | 改造後 | |||
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB: |
+0.00, -0.00 | Excellent | +0.00, -0.00 | Excellent |
Noise level, dB (A): | -400.0 | Excellent | -98.2 | Excellent |
Dynamic range, dB (A): | 91.0 | Very good | 98.1 | Excellent |
THD, %: | 0.0044 | Very good | 0.0003 | Excellent |
IMD + Noise, %: | 0.0075 | Excellent | 0.0037 | Excellent |
Stereo crosstalk, dB: | -364.0 | Excellent | -99.3 | Excellent |
IMD at 10 kHz, %: | 0.0088 | Very good | 0.0040 | Excellent |
すごい。
デカップリングコンを追加しただけなのに、ノイズレベルもダイナミックレンジも大幅に向上したようだ。
ただ、改造前のノイズレベルとステレオクロストークはきちんと測定できていなかったみたいだ。
(周波数応答、ノイズレベル、ダイナミックレンジ、THD + Noise、混変調歪み、ステレオクロストークがあります)
どうしてCreativeはデカップリングコンデンサを入れて売り出さなかったのかと思うくらい、大成功だ。
全コンデンサをオーディオクラスに変更
コンデンサは基板上に30個あるが、全てJamiconという台湾製の安物。
これらは簡単に取り外せそうなので、全てオーディオ用のコンデンサに交換してみることにした。
220uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SK | 85℃ | ×2 |
47uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SS | 85℃ | ×1 |
22uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SS | 85℃ | ×8 |
10uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SS | 85℃ | ×18 |
4.7uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SS | 85℃ | ×1 |
1uF | JAMICON | 16V | 524MO(M) SS | 85℃ | ×1 |
↓
220uF | OS-CON | 10V | 10SA220M | ×2 | ¥231 | 若松通商 |
47uF | Nichicon MUSE ES | 16V | UES1C470MPM | ×1 | ¥47 | 共立エレショップ |
22uF | Nichicon MUSE ES | 16V | UES1C220MEM | ×8 | ¥47 | 共立エレショップ |
10uF | Nichicon MUSE ES | 16V | UES1C100MDM | ×18 | ¥42 | 共立エレショップ |
4.7uF | Nichicon MUSE ES | 25V | UES1E4R7MDM | ×1 | ¥42 | 共立エレショップ |
1uF | OS-CON | 30V | 3OSC1M | ×1 | ¥84 | 若松通商 |
という変更内容だ。
この青いのがOS-CON。
オーディオ用に使用すると、中高音が引き締まり、輪郭がはっきりすると言われている。
電解コンデンサだが、フィルムコンデンサ並の理想的な特性を示す。
この緑の生い茂っているのが、ニチコンのオーディオ用コンデンサMUSEだ。
MUSEは高級アンプなどに使用されるハイグレードなコンデンサだ。
今回は両極性のMUSE ESシリーズを使ってみることに。
いざコンデンサの交換を始めてみると、なかなか苦戦した。
簡単だろうと思っていたのだが、思ったよりプリント基盤の穴が小さく、また、はんだがなかなか溶けてくれず、JAMICONは悪魔のように根をはるわ、新しいコンデンサの足はなかなか入らないわ。
だが、しばらく悪戦苦闘を繰り返しているうちにコツを掴んできた。
少し熱めのハンダコテ(60Wくらい)でJAMICONの足に付着したはんだを一気に溶かしてしまい、JAMICONを抜き去る。
そして、新しいコンデンサの足を熱めのハンダコテで熱しながら、穴に付着したはんだを溶かしながら基盤に入れる。
こうすると、すごく効率よく交換することができた。
これが交換後の壮観だ。
ちょっとした緑地帯になった。
MUSEもOS-CONもJAMICONより大きく、斜めにしないと載り切らない。
苦労はしたが、マンハッタンのような眺めを得られたことだし、とても満足だ。
歯並びの悪い基盤だなぁ。
交換後の音の変化
低音がより一層出るようになった。
音の線が太くなり、迫力が増した。
サウンドカードのキャパシティーが増えたような感じだ。
どのような音が来ようとも安心できる感じと言うべきだろうか。
RMAAで周波数特性等を計測してみたが、バスパワーの改造後の値と全く同じになった。
良いこと尽くしの結果に終わって本当に良かった。
もう元のSound Blasterのようなスカスカした音がしない。
ハイグレードなサウンドカードに生まれ変わった。
Creative USB Sound Blaster Digital Music Premium HD r2 ハイレゾ対応 USBオーディオインターフェース ア...
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