高音質デジタルアンプの自作方法|TA2020-20|20万円のアンプを1万円で超える

はじめに

TA2020-20というICを使うと、簡単にパワーアンプが作れるらしい。
アンプが欲しかったので作ってみることにした。

レゲエが好きなので、レゲエに合う低音ズドンズドンなアンプを作りたい。

カマデンからTA2020KITというキットが出ているので、これを使うとお手軽に作れるらしい。
そして、そのキットのコンデンサーやコイルを交換するとさらにパワーアップするらしい。

後から交換することを思うと、キットを使わずに、初めからグレートな部品を使ってユニバーサル基盤上に回路を作る方が安いだろうと考え、キットは購入しなかった。

オーディオの知識は皆無に近いので、部品を購入する上で、「TA2020 低音」や「TA2020 コンデンサー」などとGoogleに打ちこんで先人の知恵をお借りした。

材料

アンプ部

 品物型番(メーカー)値段購入店
#1デジタルアンプICTA2020-20(Tripath)¥1,890若松通商(ネット)
#2整流用ショットキーダイオード×81S4 41V 1A¥25×8秋月電子(ネット)
#3抵抗(10Ω)×21/2W 金属皮膜プレート±1% (ニッコーム)¥42×2若松通商(ネット)
#4抵抗(20kΩ)×41/2W 金属皮膜プレート±1% (ニッコーム)¥42×4若松通商(ネット)
#5抵抗(8.2kΩ)1/2W 金属皮膜±1%¥31マルツパーツ館
#6コンデンサ(0.01μF)×2MKT1826 メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー (ERO)¥126×2若松通商(ネット)
#7コンデンサ(0.1μF)×8MMD2E104N メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー (日通工)¥42×8シリコンハウス共立
#8コンデンサ(0.22μF)×2MKT1826 メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー (ERO)¥210×2若松通商(ネット)
#9コンデンサ(0.33μF)×4BG-PK 電解コンデンサー (ブラックゲート)¥31×4若松通商(ネット)
#10コンデンサ(1μF)×2MMD2E105N メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー (日通工)¥42×2シリコンハウス共立
#11コンデンサ(2.2μF)×2BG-C 50WV 純低雑音カップリング電解コンデンサー (ブラックゲート)¥94×2若松通商(ネット)
#12コンデンサ(3300μF)×4KMG 105℃品 (日本ケミコン)¥100(4コで)秋月電子(ネット)
#13コイル(10μH)×4TA2020KIT-SP付属防磁ケース入りコイル¥840.(4コで)SUPER COM(ネット)
#14ユニバーサル基盤片面ガラスエポキシ 72×47mm¥60秋月電子(ネット)
#15配線SONY ミニコンポ DHC-MD333 付属スピーカーケーブル自宅にあった
#1 TA2020-20
TA2020-20
トライパス社のデジタルアンプIC。恐るべし高効率85%(スピーカー6Ωにて)、環境にやさしいアンプだ。このICに複雑な信号増幅回路が集約されているので、ちょいちょいと回路を組めば簡単にパワーアンプが作れる。20W+20Wなので、ミニコンポの2wayスピーカーに繋ぐには十分すぎるパワーだろう。音が良いと好評らしいので楽しみ。
#2 1S4
ショットキーダイオード1S4
整流用ショットキーダイオード。耐圧40V、1A、立ち上がり電圧VF = 約0.4〜0.5V。OUTPUTの電圧がGND以下にVDD以上にならないようにするクリップ用なので、立ち上がり電圧VFの低いものを選んだ。GND、VDDに近い電圧にクリップできるだろう。
#3 ニッコーム10Ω
ニッコーム
Zobel networkを形成する抵抗。Zobel networkについてはスピーカー関連の技術資料のサイトで分かりやすく解説されてます。
普通の金属皮膜でも良かったのだが、ちょっとこだわってプレート抵抗にしてみた。プレート抵抗も金属皮膜ですが、金属皮膜とカーボン抵抗の中間的な音がするらしい。
#4 ニッコーム20kΩ
ニッコーム
帰還回路のゲインを決定する抵抗に利用する。信号に対して直列に入る抵抗なので、この抵抗たちは音に起因するところ大のようだ。ここにもなんちゃってプレート抵抗を使用してみる。
#5 金属皮膜抵抗8.2kΩ
金属皮膜抵抗
バイアス用の抵抗らしい。何故ここだけ金属皮膜にしたのかは作者も謎である。ただニッコームを買い忘れたというわけでは決して…。
#6 MKT1826 0.01μF
MKT1826
EROのオーディオ用メタライドポリエステルフイルムコンデンサー。OUTPUTにパラで接続して、スピーカー(への?)から入るノイズの高周波成分を除去するためにつけるらしい。Differencial
Output Capacitorという名前らしいが、詳しいことは分かりません。
#7 MMD2E104N 0.1μF
MMD2E104N フィルムコンデンサ
パスコンに用いる。全部で8個も使用するので、なるべく安いフィルムコンデンサーを選んだ。どんな音がするのかは未知だが、オーディオ用メタライドポリエステルフイルムコンデンサーということなので、良い音がしそうな気がする。因みに、パスコンにはフィルムよりもセラミックコンの方が向いているらしいがこの際良しとしよう。
#8 MKT1826 0.22μF
MKT1826
Zobel networkを形成するコンデンサー、EROのオーディオ用メタライドポリエステルフイルムコンデンサー。このシリーズはなかなか定評があるらしい。
#9 BG-PK 0.33μF
BG-PK BlackGate
出力キャパシタ。スピーカーのインピーダンスにより容量を変えるのが良いらしい。(インピーダンス整合を取るためか)
4Ω→0.47μF
8Ω→0.22μF
とトライパスのデータシートにある。私のスピーカーは6Ωということで、間を取って0.33μFくらいだろう。
低音ズドンズドンが好きなので、低音が鳴ると悪名高いブラックゲートにしてみる。
#10 MMD2E105N 1μF
MMD2E105N フィルムコンデンサ
チャージポンプ(charge pump)の出力につけるデカップリングコンデンサ。このチャージポンプによりごくわずかなVDD以上の電圧が出ているらしいのだが、何故ここにチャージポンプが必要なのか見当もつかない。とりあえず安く買えたオーディオ用メタライドポリエステルフイルムコンデンサーにしておこう。
#11 BG-C 2.2μF
BG-C BlackGate
入力のカップリングコンデンサー。このコンデンサーは音に大きく起因するらしい。やはり低音ズドンズドンにするためブラックゲートにしてみる。このBLACK
GATEは超低雑音カップリング用らしい。
#12 KMG 3300μF
3300uF KMG 平滑コンデンサ
破格の4本100円で買えたコンデンサー。何故これにしたかというと、安かったからとしか言いようが無い。スイッチング電源のリップル除去用電源平滑コンデンサーなので、できれば低インピーダンスのものが良かったのだが…。
4本全てを使うと容量が13200μFと恐ろしく大きくなって突入電流が恐いので、3本くらいにしておこう。
#13 コイル 10μH
TA2020-20SP kit 防磁コイル
TA2020KIT-SP付属防磁ケース入りコイル。トロイダルコアにエナメル線を巻いて自作するつもりだったのだが、インダクタンスを測定する環境に無いことに気付き、しぶしぶ購入。防磁ケースに入っているが、念のためコイルがなるべく相互に結合しないよう、基盤に間隔をあけて設置してみる。
#14 ユニバーサル基盤
ユニバーサル基盤
片面ガラスエポキシということで割れにくいらしい。なかなか見た目も良い。サイズは72×47mmと小さめ。このくらいの大きさならいけるだろうという適当な予測は的中するのだろうか。
#15 配線
スピーカーケーブル
SONY ミニコンポ DHC-MD333 付属のスピーカーケーブル。スピーカーケーブルということで配線に使う分には悪くないだろう。太さは恐らく18芯。

ケース・電源・配線

 品物型番(メーカー)値段購入店
#1スイッチングACアダプター(12V、5A)STD-1205(GO FORWARD)¥1,700秋月電子(ネット)
#2電源DCジャックMJ-10 (マル信無線電機 )¥30秋月電子(ネット)
#3可変抵抗(10kΩ2連A型)RK27112(アルプス ミニデテント)¥1,890若松通商(ネット)
#4トグルスイッチMS-500K-B (ミヤマ電器 )¥147マルツパーツ館
#5ヒートシンク17P23L25¥105若松通商(ネット)
#6ブラケットLED(12V)CTL701R (三成電器)¥168マルツパーツ館
#7ツマミWT-37¥262若松通商(ネット)
#8RCAプラグ×2RJ-2008AT¥120×2秋月電子(ネット)
#9スピーカー端子×2BP-226G赤黒セット¥451×2若松通商(ネット)
#10配線スピーカーケーブル30芯 2m(ダイエイ電線)¥188若松通商(ネット)
#11フェライトコア5mm径タイプ (TDK)¥100秋月電子(ネット)
#12ケースUC9-5-12DD (タカチ電機)¥1,610部品屋ドットコム(ネット)
#1 スイッチング電源
スイッチング電源 12V 5A 秋月電子
20W+20Wの駆動力があるアンプなので、そこそこ容量のある電源を探していたら、秋月電子で格安で売っているのを発見。12V 5AのスイッチングACアダプターだ。これだけのものがこの値段で売っているのは何か裏がありそうだが、気にせず使ってみる。出力にはフェライトコア付き。電源を外に出せるのでアンプ本体を小さくできるし、電源が発するノイズ対策にもなりそうな気がする。
#2 電源DCジャック
電源DCジャック
3本端子があり、どの端子がプラスでマイナスなのかよく分かりませんが、適当にケースに設置することにしよう。テスターで判別したいところだけどテスターのヒューズが飛びそうで恐い(電圧計は入力インピーダンスが大だから大丈夫だったかな…)。
#3 可変抵抗
アルプスミニデテント
音質に定評のあるアルプスのミニデテント。とても高価だが、ここはケチってはいけないらしい。素晴らしい音の鳴るアンプにするため、おこづかいをはたいて購入。シャフトを回すとクリック感があって高級感があり嬉しい。シャフトが長すぎるので金ノコで切らなければならない。
#4 スイッチ
トグルスイッチ
一般的なトグルスイッチ。たくさん足があると、どの足がどの足につながっているのかややこしいので2本足のものにした。
#5 ヒートシンク
ヒートシンク
TA2020-20はあまり発熱しないらしいが、一応つけておくことにする。なんかちょっとかっこいいし。
#6 ブラケットLED
12VブラケットLED
抵抗入り12V用ブランケットLED。電源ONであることを光って知らせてくれるようにするため購入。緑にすれば良かったと今になって少し後悔。
#7 ツマミ
アウトレットツマミ
ゴールド加工のアルミ製ツマミ。小さな傷があるらしく、アウトレット価格で購入できた。シャフトをとめるネジは六角レンチ1.5mmで調節できる。
#8 RCAプラグ
RCAプラグ
金メッキがちょっとうれしい。適当に安いものにした。”高級品”と書いてあったので大丈夫だろう。
#9 スピーカー端子
金ぴかスピーカー端子
金ぴかのかっこいいものにした。見た目を重視したので、ちょっと高くついた。
#10 配線
ダイエイ電線
ダイエイ電線の30芯平行線スピーカーケーブルだ。各端子とアンプを繋ぐ配線に使用する予定。
#11 フェライトコア
フェライトコア
平滑コンデンサーの後段に付けて高周波ノイズ除去しようという狙いで購入。ACアダプターにフェライトコアが付いているものだったのでいらなかった気がしなくも無い。
#12 ケース
タカチ UCアルミケース
トライパス D級アンプの方が使っておられるケースがかっこよかったので、真似させてもらった。W9cm、H5cm、D12cmというパスポートサイズ。電源を外付けするからこそ成せる小ささだ。

アンプ部の製作

アンプの回路はほとんどトライパス社のデータシート通りにした。
http://www.kafka.elektroda.eu/pdf/tripath/TA2020.pdf (←Tripath社データシート)
変更点は、Output Capacitorの容量を6Ωスピーカー用に0.33μFにしたことと、MUTEとSLEEPをGNDに落としてあることくらい。

とりあえず基盤に部品を乗せてみた。
TA2020-20 部品をのせたところ

ギリギリで全ての部品を乗せることができた。
基盤のサイズはぴったりだ。

TA2020-20はそのままではユニバーサル基盤には入らない。
そこで、奇数番号の足をペンチで慎重に折り曲げて基盤に刺さるようにした。

実際に配線…(3時間くらい)

前面
TA2020-20 基盤前面

背面
TA2020-20 基盤背面

側面
TA2020-20 基盤側面

裏面
TA2020-20 基盤裏面

あちゃー。
配線ぐちゃぐちゃになってしまった。
ICは32pinあり、密集しているので配線が難しい。
それにしても基盤を小さいものにしたのは失敗。
部品が密集しているのでハンダ付けがとてもやりにくい。

ケースの製作

タカチUCアルミケース

最初は木でケースを作ったのだが、ニス塗りに失敗し、小学生の自由研究という感じが否めなかったのでかっこいいアルミのケースにすることにした。
アルミの加工は初めてだ。

アルミケースの加工

えんぴつで印をつけて、ビンバイスで穴を開けた。
ビンバイスはその昔、ミニ四駆の肉抜き用に買ったTAMIYAのものだ。
こんなところで役に立つとは。
電動ドリルがなくても、ビンバイスで十分だ。(たくさん穴をあけるにはしんどいが…)
案外簡単に穴が開く。
えんぴつで印をつけたところにドライバー等で傷をつけておくと、ドリルの先がずれないので穴を開け易い。

アルミケースの加工 ビンバイス、シャーシリーマー

必要な穴が開いたところで、次は各端子が入るように穴を広げなければならない。
そこで、ホームセンターで”シャーシリーマー”というものを買ってきた。(上部写真の左側がリーマー)
1,000円くらい。

アルミケースの加工 ビンバイス、シャーシリーマー

これでぐりぐり穴を広げる。
ものの2分くらいで1つの穴を必要な広さに広げることができた。
残ったバリはやすりで取った。
電源DCジャック用の穴の大きさは、シャーシリーマーの許容範囲を超えていたのでリーマーで広げれるところまで広げてから、やすりで穴を広げた。

アルミケースの加工 ビンバイス、シャーシリーマー

ケースの加工が一応できた。
2時間くらいで完成した。
アルミは思っていたより柔らかく、加工がけっこう簡単だった。

続いて、可変抵抗のミニデテントのシャフトが長すぎたので、金ノコで切断。
アルプスミニデテントボリューム

このシャフトもアルミなので簡単に切れた。
金ノコは何故か彼女が持っていたのでそれをお借りした。
(いったい何を切っているのやら…。)
百円均一にも金ノコは売られている。

ケースへの組み込み、配線

TA2020-20ケース入れ

ケースに部品を置いてみた。
ピッタリだ。
ヒートシンクやフェライトコアはスペースの関係上、設置は断念。

各部品への配線は簡略回路図をどうぞ。
(ミニデテントは帰還抵抗のところに配線している)

TA2020-20 配線

実際に配線。

ケースを閉じてみる。
TA2020-20 箱詰め完了

TA2020-20 箱詰め完了

こだわった金メッキスピーカー端子がいい感じ。

さて音は出るのだろうか。
これで音が出なければ、ただの”お金のかかる箱”だ。
低音を云々言っている場合ではない。

スピーカー、サウンドカード、電源に繋いでスイッチON。

LEDブランケットが赤く光った!
TA2020-20 スイッチON

しかしウンともスンとも言わない。
ただの箱だ…。

調子に乗ってユニバーサル基盤に作ったのが間違いだったか。

もう一度配線を確認してみることに。
配線がぐちゃぐちゃなので配線チェックがとても面倒だ。
苦難のチェックの結果、5Vを供給する2pin、8pin、30pinを接続していないことに気が付いた。
あわてて修正。

今度こそと胸を躍らせて、もう一度挑戦。
スイッチON!

ウンともスンとも言わないではないか。
またしても…。

今度は電源ONの状態で、テスターを用いて、各端子の電圧をチェックしてみた。
AGNDにテスターのマイナス端子を置き、各端子、ICの足の電圧をチェックしていった。
VDD → 12VなのでOK
VDD5V → 5VくらいなのでOK
INPUT → 3Vくらい(合っているのか間違ってるのかよく分からん)
OUTPUT → 7Vくらい(合っているのか間違ってるのかよく分からん)
DGND → 3Vくらい… これはNGか!?

AGNDとDGNDが3Vも差があると正しく増幅できないのではないかと考え、AGNDとDGNDを接続してみることに。

ザ、ザザザ → ♪♪♪

ついに音が鳴った!!
感動の瞬間。

透き通ったきれいな音たちが流れ出す。

音が鳴って本当に良かった。
涙が出そうになった。

ANGDとDGNDは接続しなければならないみたいだ。

音を聴いてみる

音楽を聴く環境は貧しいものだ。
TA2020-20が泣いてしまう環境かもしれない。

foobar2000 (foo_mpg123.dll) or TV

USBサウンドカード(Sound Blaster Digital Music LX)

RCAケーブル0.5m(AT5A64)

TA2020デジタルアンプ

スピーカーケーブル0.3m(ダイエイ電線 赤黒50芯/平行線)

ミニコンポ(SONY DHC-MD333)の2wayスピーカー

TA2020の以前は、アンプとして9年という長い付き合いのミニコンポ(DHC-MD333)をSound Blaster Digital Music
LXと光接続して使っていた。

比較対照はこの2つの環境。

TA2020デジタルアンプにした結果は

高音域以前の篭っていた音が、とても澄んだ音になった。シンバル等の音もシャリシャリ言わず、鈴の音が涼しくて綺麗。女性ボーカルの声が少し乾燥しているように聞こえる。
クリアになって格段にパワーアップした。
中音域ボーカルの声が前面に張り出しているような感じがする。カマボコ様式だ。
低音域ズドンズドン。低音に最も期待していたが、期待通り強い低音を鳴らしてくれている。太鼓の音がリアルで良い。迫力がある。
全体としてクリアな感じがする。各楽器の音を聞き分けることができるようになった。解像度が高いとはこのことを言うのだろうか。デジタルアンプはそっけない音だと思っていたが、思っていたより味がある。音の太さは細くもなく太くもない。

その後

●ボリューム位置の変更

ボリュームの調節がちょっとやりにくい。
ボリュームを絞っても音が大きすぎるし、小さな音量の微調整が効かない。そこで、ボリュームの位置を変更してみた。
これまでは入力抵抗に直列に接続していたが、帰還抵抗である20kΩのニッコームを取り除き、ここにミニデテントを入れてみることにした。帰還部にVRを入れると、ガリオームが生じたときにゲインが無限大になって危険だが、ミニデテントの端子(3)を端子(2)に繋ぐことで、ガリオームが生じてもゲインが最大1/2になるようにしてある。
(ガリオームとは、接触不良により、VRの抵抗値が無限大になってしまう現象のこと)入力抵抗に直列でミニデテントを入れると、音が篭ってしまうらしいが、この配線方法ならその心配もない。実際、音が少しクリアになった気がする。

●スピーカー出力端子への配線に圧着端子を使用

スピーカー端子の金メッキにハンダがなかなかつかなかったので、ネジで銅線をはさんで繋いでいたのだが、なんだか少し気持ちが悪かったので、精神衛生のため圧着端子を使用してみることにした。
圧着端子こんな感じ。たくさん入って62円だった。
金メッキのものが良かったのだが、金メッキのものは600円と高額で手が出なかったので、これで我慢することにした。
これは銀メッキかな?はんだメッキである気がしなくもない。圧着端子設置
こんな感じになった。買うものを間違えて、スピーカー出力端子に圧着端子の穴が入らなかったので、またしてもシャーシリーマーが登場して穴を広げてくれた。これは非常に音が変化した。
女性ボーカルの乾燥した感じだった声が色っぽくなり、低音の迫力が増したような。
その代わり、少しシンバル等がシャリつくようになり、全体的に音量が小さくなり、篭った安っぽい感じになってしまった。個人的に、変更前の方が良かった。
圧着端子を用いず、直接スピーカー端子にハンダした方が良いみたいだ。

そこで…↓

●スピーカー端子に直接ハンダ付けしてみる

TA2020-20 スピーカー端子に半田付け

 

こっちの方が圧着端子より格段にボリュームも大きいし、解像度も高い。
高音がとてもきれいに聞こえる。
女性ボーカルの声も、澄んだ声に。
しかし、せっかく買った圧着端子を使えないのが寂しい。

●GNDをケースに落としてみる

ケースをGNDに落としてみる

 

GNDはしっかりしている方が低音が出るらしい。
本当は庭にでっかい釘を打ち、それをアースにするのが良いらしいのだが、我が家はマンションなのでベランダに釘を打つわけにもいかない。
そこで、気持ち程度の改善を狙ってGNDをケースに落とすことにした。
ボリュームもケースにひっついているので、ケースをGNDに落とすことで、ボリュームケースもGNDに落とせることになる。
これはノイズ対策に効果的だろう。

せっかく買った圧着端子とダイエイ電線の出番だ。
ダイエイ電線30芯は太すぎてユニバーサル基盤の穴に入らなかったので、こういう形で使用できて嬉しい。

ユニバーサル基盤をケースに固定しているネジに圧着端子をはさんで、ネジからケースにGNDが渡るようにした。

気持ち程度低音がズドンとくるようになった気がする。
ケースに達するまでには数多くの接触抵抗があるため、あまり意味がないような気もするが…。

●電源平滑コンデンサーをMUSE FX 3300μF/16V × 3に変更

MUSE FX 3300μF/16V   MUSE FX 3300μF/16V

 

安さがピカイチのKMG 3300μFにさよならを告げる時が来た。
音が悪いわけではなかったが、自己満足のために選手交代だ。
ヤフオクでMUSE FX 3300μF/16Vが1個170円で売られているのを発見したので3個購入してみた。
MUSE FXはもう製造終了している古いものらしいが、多少古くたって関係ない、ニチコンのMUSEは評判が良いようだし。

MUSE FX 3300μF/16V配線

あちゃー、相変わらず配線は無茶苦茶だ。

しかし音の変化に驚いた。
・ボリュームがとても大きくなった
・音が太く深い音になり、味が増した
・ボーカルの声が前面にせり出してきたような気がする(より一層カマボコに)

これは交換して正解だ。
ボリュームが大きくなり、味が増したのが嬉しい。
TA2020-20へ送られる電荷のほとんどは、この平滑コンデンサーに一度蓄えられ、そこから送られているようなので平滑コンデンサーが音に与える影響は大きいようだ。

●スピーカー変更によるアンプの調節

長年連れ添ったミニコンポに別れを告げる時がきた。
FOSTEXの12cmスピーカーユニットFE-127Eを使った自作バスレフスピーカーが完成した。
それに伴いこのスピーカーのインピーダンスは8Ωのため、出力コンデンサ4つをBG-PK 0.33μF (6Ω仕様)

BG-PK 0.22μF (8Ω仕様)へと変更した。my night DIY audio systemスピーカーもアンプも自作のものという、自己満足たっぷり環境だ。
この世に一つしかないアンプにスピーカーなので、それらが奏でる音も唯一無二だ。
そんなことを考えながら音楽を聴くのはとても贅沢な気分だ。

●DCオフセットの調節

アンプの電源投入時や、PCの電源投入時にポツポッとPOPノイズが出る。
どうやらDCオフセットの対策がきちんとできていないからのようだ。TA2024Cのデータシートの11ページ目に、オフセット調節回路が載っているのを見つけたので、TA2020にこれを行ってみることにした。TA2020-20用 DCオフセット調節回路
(回路が間違っていました、ご指摘感謝です。2007/4/25修正)微調整用の可変抵抗には、5kΩの多回転式ポテンショメーターを用いることにした。
本来は50kΩくらいのポテンショメーターの方が調節し易い。

 

910KΩ抵抗 1/2W 5%RMA(リケノーム) ¥78×2 若松通商(ネット)
5kΩ ポテンショメータ RJ-9W 多回転微調整用ボリューム ¥210×2 若松通商(ネット)
0.1μF コンデンサ BG-PK 50WV (BlackGate) ¥31×2 若松通商(ネット)

リケノームRMA
オーディオ用抵抗として有名な理研のリケノーム。
色付けされた元気な音がするとのこと。

ポテンショメータ
黄色が鮮やかなポテンショメーター。

BlackGate BG-PK
いつもお世話になっている低音のBlackGateだ

DCオフセット回路配線

TA2024Cの回路図通りに組んでみた。

ポテンショメーターの値を変えても、抵抗を挿入してみても
Left:+70mV
Right:-6mV
よりも0に近づけることはできなかった。

左のDCオフセットが70mVもあるので、当然POPノイズは除去できていない。
TA2020でもDCオフセットが調節できるはずなんだけど…。

+5Vを抵抗で分圧して調節できるはずなんだけどなぁ。
力不足で中途半端で敢え無く断念。

後日追記:
入力INPUT端子をGNDに繋いでDC OFFSETを合わせていませんでした。
きちんとIN1とIN2をGNDに繋いでオフセットを調節すると、左右ともにほぼ0mVに合わせることができた。
これで一安心だ。

しかし、まだ電源ON-OFF時に小さなPOPノイズが出る。
以前に比べれば小さいんだけれど…。
POPノイズはDCオフセットが原因じゃないのかなぁ。

しかし、DC OFFSETを0に合わせることができると、非常に音が良くなる。
解像度も迫力も増した。
ちょっと面倒だが、DC OFFSETを調節しない手はないと言える。

その後

DCオフセット回路変更
黄色いポテンショメータが5kΩと小さい値のものだったので、50kΩのものに変更。
秋月電子でBOURNS社の3296Wというのが¥80/1個で売っていたのでこれにした。

DCオフセットの調節が上手くいってPOPノイズを除去できた方がいらっしゃったら、是非情報を下さい。

●POPノイズ除去用リレー回路

DCオフセットを0V付近に合わせてもPOPノイズは取り去りきれなかった。
どうやら、電源ON-OFF時の過渡状態に起因してPOP音は鳴るようだ。
そこで、遅延リレーにより電源電圧がある程度安定してからアンプの出力をスピーカーに繋ぐことにした。以下のサイトを参考にした。
緑のボタンを押せ! Press the green button 〜かなり莫迦オヤジのメディアPC〜
トランジスタのスイッチング回路

CR回路応答(時間領域編その1)トランジスタのスイッチングを利用した遅延リレー回路だ。

 

TA2020-20 POPノイズ除去回路
アンプのスイッチON時、4.2秒でリレーがONになり、
スイッチOFF時はおよそ10Vを下回るとリレーがOFFになる設計だ。

遅延時間 t は以下のように求めた。
時定数 : C・(R1+R2) = 1000uF * 10470ohm = 10.47s
B-E間が0.6V付近になればトランジスタがONになりリレーがONになる。
ツェナーダイオードで10.1Vが降下されるので、R1,R2,Trには12V – 10.1V = 1.9Vの電圧がかかる。
0.6Vはこの1.9Vの31%に相当する。
「CR回路応答(時間領域編その1)」の図3充電と時定数より、電圧が31%になるまでにかかる時間を読み取る。
私の場合は、時定数の0.4倍付近で31%になっているので、
t = 10.47 * 0.4 = 4.188s
と求まった。

実際、スイッチを入れてからリレーがONになるまでおよそ4秒かかっているので、自信はないがこの計算で間違ってはいないようだ。
(誤りがありましたらご指摘下さい。)

しかし、注意が必要だ。
R1の決定方法についてだ。
“トランジスタのスイッチング回路”で詳しく解説して下さっている。
リレーのコイルには定格41.7mA(購入したDC12Vのリレーに於いて)流れればよいので、余裕をもっておよそ60mAコレクタに流せるように設計した。
R1 = (12V-0.6V-10.1V) / (60mA/300) = 6.5[kΩ]
2SC1815はGRグレードなので200〜400、また、R1>%gt;R2としている。0.6VはB-E電圧だ。

ただ、手元に5kΩくらいの抵抗がなかったので、手元にあった10kΩを使うことにした。
10kΩだと、リレーがONになるに十分な電流が供給できるか危ういところである。
いちかばちかでやってみた。

リレー オムロン

2回路2接点リレーG5V-2 DC12V 283円/個 オムロン

2SC1815 トランジスタ

2SC1815 GR 21円/個

実際に部品を並べるとこんな感じ。

POPノイズ低減回路

1000uFのコンデンサには、低ESRの105℃品を用いた。

結果

・電源ON時のボコっというPOP音はほとんど聞こえなくなった ←大成功
・電源OFF時はPOP音が鳴ってからリレーが切れる音がする ←失敗

電源ONのPOP音はこれで対策できる。
R1を10kΩにしたが、ちゃんとリレーは動作してくれて一安心。
しかし、電源OFF時はOFFにしてから0.5秒ほどでPOP音が鳴るため、リレーがOFFになるのに2秒ほどかかってしまうため、対策になっていない。
ツェナーダイオードを11.4Vに近づけることでOFFになる時間を短縮できそうだが、0.5秒まで縮めることができるかは分からない。
それは、このリレー回路の時定数よりも、アンプの平滑コンデンサの大容量化によって、電源電圧が低下するのに時間がかかってしまうためである。
電源OFF時のPOP音も除去し切るには、電源スイッチに即座に応答するリレーをもう一つ組まなければならないだろう。

その後、回路シミュレータの”LTspice/SWitcherCAD III”でシミュレーションしてみた。
出来上がってからシミュレーションするのもおかしな話だが、もはや気にすまい。

POPノイズ対策 シミュレーション LTspice

10.1Vのツェナーダイオードspiceモデルが見当たらなかったので、9Vにしている。
他は、実際に作った回路と同じ値にした。
電源電圧Vccは、
0 – 0.1s: 0.6V→12V
0.1 – 20s: 12V一定
20 – 22s: 12V→0.6V
となると仮定した。0.6Vを初期状態にしたのは、平滑コンデンサの容量が電源をOFFにしても完全に抜け切っておらず0.6Vくらい電圧が残留しているため、このようにした。

POPノイズ対策 シミュレーション結果 LTspice

ほぼ4秒でリレーがONになっている。
しかしI(RL)が33mA程度しか流れていない。やはり、10kΩは大きすぎたようだ。
予め、LTspiceで適当な遅延時間と電流値になるように1000uFと10kΩの値を割り出せば良かった。

●5V電圧の安定化

12Vの供給電圧はきちんと平滑コンデンサでリプルやノイズ対策をしてきた。
しかし、5Vの供給電圧に対しては一切対策を講じていないことに気付いた。TA2020-20はIC内部にレギュレータを持っており、そのレギュレータからの出力である5Vが30pinから出ている。
この5Vをもらっているのが2pinと8pinだ。
2pin:V5D(デジタル5V入力)
8pin:A5D(アナログ5V入力)この5Vにより、さまざまな部位に電源電圧が供給されている。
この5Vが揺らいでしまってはいけない。TA2020-20 5V電圧の安定化回路図上図のように、デカップリングコンデンサC1,C2を2pin-3pin間、8pin-7pin間に挿入する。
値は、数100μF程度のオーディオグレードのコンデンサが良いようだ。
もっと大容量のものを挿入しても良いように思う。このデカップリングコンデンサで、5V GENで生成された5Vの揺らぎを抑えることをできる。
並列で入っている0.1μFのコンデンサは、ICから出る高周波ノイズを吸収するために取り付けてある。

 

ニチコン MUSE ES
これが今回C1に選んだコンデンサ。
22uF  ニチコン MUSE ES 16V UES1C220MEM ¥47 共立エレショップ
もう少し容量のあるものが良かったが、手元にオーディオコンデンサがこれくらいしかなかったので仕方が無い。
MUSEの無極性タイプだ。
MUSEの音が好きなので容量は小さくても多少の効果はあるだろう。

OS-CON
C2に選んだコンデンサ。
100uF  SANYO OS-CON 20V 20SA100 ¥231 若松通商
その名高いOS-CON。
電解コンデンサとは思えない素晴らしい特性を示すと人気のコンデンサだ。
TA2020-20にも一つはOS-CONがないと寂しいなという安易な理由からこれにした。
OS-CONはデカップリングに向いているそうなので、抜擢かな。

音の変化

低音の迫力に驚いた。
この改造は非常に効果的だ。
低域のキャパシティーがどっと増えたような余裕のある音になった。
これは素晴らしい。

その後… 外部スイッチングレギュレータによる5V供給

5Vのスイッチングレギュレータが良い具合に一つ余っていたので、5VをTA2020-20のICからの供給ではなく、外部から供給してみることにした。
秋月電子で100円で買った5V 1AのTA4805Sだ。

スイッチングレギュレータ
各端子間に高周波ノイズ除去用の積層セラミックコンデンサ0.1uFを配置。

この出力をTA2020-20の30pin VGENの代わりに2pin、8pinに供給する。

もはやレギュレータ用のヒートシンクを設置するスペースがなかったので、ケースをヒートシンクとして使用することにした。
TA4805Sはモールドパッケージなので、パッケージは絶縁されているから安心だ。
両面テープでケースに貼り付けておいた。

TA2020-20 5V電圧の安定化 ぎりぎりの配線

もうぎりぎりの配線。
これだけ大きなヒートシンクだといくら発熱しても冷え冷えだろう。

レギュレータの出力には3300uFのMUSE FineGoldで平滑している。

レギュレータによる音の変化

笑ってしまうくらいに良くなった。
カセットテープからCDに乗り換えたかのように、輪郭がはっきりして解像度が増した。
やはり、TA2020のIC内部に搭載されているレギュレータを使うより、外部供給の方が良いみたいだ。

●レタリング

スイッチのON/OFFがどっちがどっちなのか分かりにくかったので、レタリングを入れることにした。
若松通商で200円くらいでレタリングシートを手に入れ、該当する文字を擦り付けた。TA2020-20 レタリングTA2020-20 レタリング調子に乗って裏側までレタリングしてみた。
押し付けて擦るだけなのでとても簡単だ。まるで市販品のように仕上がった。(と思っている)ACアダプタの入力は「ac」ではなく「dc」だなぁ、と写真を撮って初めて気が付いた。

一応完成

TA2020-20 ライターと大きさ比較

ライターと比べるとこのようになる。
びっくりするくらい小さい。
20W+20Wのパワーアンプとは思えない。
この大きさでも、満足すぎるほどの音を奏でてくれているし、1万円ちょっとのコストでつくることができた。
すごいコストパフォーマンス、スペースパフォーマンスだ。
因みに、このICは10万円のアンプにも劣らないと言われているらしい。

また、わざわざユニバーサル基盤に作らなくても、カマデンが出しているTA2020KITというキットを使うともっと簡単にできるようだ。
でも、ユニバーサル基盤に作った方が安上がりだし、愛着が湧くかな。

いまは、この自作バスレフスピーカーにつないで、大満足なオーディオ環境になっている。

このページを見てくれた方が興味を持ってくれたら嬉しい。
というのも、

アンプを作る人が増える

電子部品を買う人が増える

電子部品の市場が賑わう

新たな部品が次々に発表され、各部品は安価になる

私が安価で部品を購入できる

という矢印がどんどん下へ進むであろうからだ。
なんという利己主義。

●お役立ちリンク

若松通商TA2020KITも、コンデンサーやケースなどたくさんの部品を揃えることができる。送料もなかなか安め。
秋月電子格安で部品を売っている。特にスイッチング電源が格安。ここで欲しい部品があれば安く抑えることができる。送料と代引き手数料が少し高め。
SUPER COMオーディオ関連商品のところにTA2020KITなど、オーディオ部品が売られている。ここでは、TA2020KIT-SPの防磁コイルが手に入る。送料もなかなか安め。
部品屋ドットコムさまざまな電子部品が売られている。ここではタカチ電機のケースがほとんど全て揃っている。送料は普通。

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